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ヘイグループ(現:コーン・フェリー・ヘイグループ)
ディレクター 山口 周氏 インタビュー


 

人材・組織開発のパイオニアとして70年以上この分野をリードしてきたヘイグループ。日本では35年にわたり時代の変遷とともに変化する企業の課題解決を支援してきました。多くの日本企業が経営戦略実現のための人と組織の変革に取り組んでいる現在、同社の役割が年々高まっていることを背景に、メンバーの拡充を進めています。

今回はディレクターの山口周様(2018年11月時点ではシニア・クライアント・パートナーとしてご活躍中)に同社の強みや目指しているもの、求める人材像についてお話を伺いました。

※本記事は2015年12月のコーンフェリーによるヘイグループの買収完了以前のインタビュー内容となります。
現在の同社の経営方針・組織体制とは異なる場合があります。予めご了承ください。

INDEX

ヘイグループの概要:世界で70年、日本で35年の歴史とグローバルネットワーク

本日はお時間を頂き有難う御座います。まずヘイグループの概要についてお聞かせください。

ヘイグループは、全世界に2,600人以上のプロフェッショナルスタッフを抱える世界最大級の人事・経営コンサルティング会社です。1943年の設立以来、70年以上にわたり一貫して人材および組織開発をテーマとして追求しています。職務ベースの処遇制度として知られるヘイシステム、人材開発におけるコンピテンシーやEQなど世界の企業経営に変革を起こす発想や手法を編み出し、これまで世界各地で9,000以上もの企業・団体様を支援してきました。現在は世界約50か国に約90のオフィスを構え、特にリーダーシップ開発では世界トップのシェアを占めています。

日本では1979年以降、すでに35年にわたりビジネスを展開しています。現在の社員数は30~40代を中心に約60名で、国内大手企業を中心にさまざまな課題解決や変革支援を手がけています。戦略系・人事系コンサルティングファームや事業会社の人事部門の出身者が比較的多いですね。

すでに国内外で長い歴史をお持ちなのですね。現在手がけているプロジェクトのテーマにはどのようなものがありますか?

「人事制度の設計」「リーダーの育成」「組織のデザイン」の3つが主流のテーマです。1つめの人事制度の設計は1980年代から継続して取り組んでいる領域です。

リーダー育成と組織デザインの2つは近年急速に依頼が増えている分野です。リーダー育成では、管理職になりたての課長レベルから役員クラスまで、次世代の経営幹部の育成を支援しています。失われた20年を過ごしてきた今の20~30代は成功体験、ひいてはチャレンジする「打席」に立った機会が少なく、このような経験の少ない社員の中からいかに重要なポジションの後継者を育てるかが企業の喫緊の課題となっています。

組織デザインの面では、日系企業のグローバル化への対応が多く、特に買収や合併などを通じて海外進出を果たした後のグローバル組織をどのように設計していくのか。その組織デザインをヘイグループの海外オフィスと連携しながら支援しています。

ヘイグループの強み:アカデミックな知見やデータで経営と人事をつなぐ

有難う御座います。人事に関することなら、ほとんどすべてをカバーする幅の広さがあるのですね。他のコンサルティング会社と比べた、ヘイグループの強みやユニークな点はどこにありますか?

大きく2つの独自の強みがあります。1つめは、行動心理学を基盤とするアカデミックな知見・データに裏打ちされたコンサルティングです。

ヘイグループはエドワード・ヘイ(Edward N.Hay)によって1943年に設立されましたが、社内に行動心理学を中心とする研究機関であるマクレランドセンター※1を有し、心理学をベースに人の心を可視化して、モチベーションや意識など曖昧模糊としたソフトスキルの定量化に取り組んできました。コンピテンシーモデルをはじめとする数々の人材評価手法やリーダーシップ育成メソッド、組織開発・マネジメントツールも、ヘイグループのバックボーンにあるこのアカデミックな知見をもとに生み出されたものです。

ヘイグループではこれらのグローバルで統一したMethodologyを世界中のクライアント企業で実行し、その過程で得た知見をもとに各種ツールや手法の改良を重ね、継続的に企業経営を支援しています。現在ではFortune 500にリストアップされているグローバル企業の半数以上が、ヘイシステムと呼ばれる手法を活用しています。これまで蓄積した膨大な統計データをもとに、クライアント企業のニーズを満たす高度なツール・手法の開発を継続できる点がヘイグループの強みの1つです。

※1 マクレランドセンター(McClelland Center for Research and Innovation)
コンピテンシー理論を提唱したマクレランド博士が設立した組織。現在までに世界中で何十万人ものマネージャーと役員の評価、能力開発を実施

人の心を定量的に可視化するシステムのパイオニア的存在なのですね。もう1つはどのような点ですか?

「経営戦略」と「人・組織」の"つなぎ目"をつくれる点です。人事と企業の経営戦略は密接につながっていて、弊社が担う組織変革や人材育成、報酬改定など人事制度改革の大半は、大きな経営戦略を背景にして進められます。

ただ日本企業では担当する部門が異なることもあり、経営戦略と人・組織の間に大きな溝(キャズム)が存在する場合があります。特に現在の企業は劇的な環境変化に直面しており、経営戦略の変更に伴って人事上の政策や運用をどう変えるのかという点を、1つひとつ演繹的に考えていく必要があります。この両者を先程述べた知見やデータを活用してしっかりつなぎ、経営戦略と人事制度のアライメントを取れる点が、戦略系や他の人事系コンサルティングファームにはないヘイグループのユニークな点です。

人事に関することのみならず、より包括的な経営全体の問題解決に携わっているのですね?

そうですね。弊社と付き合いの深いお客様には、以前から戦略直結型のプロジェクトを実施することも多かったのですが、加えて近年は新たに寄せられる依頼にも企業の成長戦略に直結するタイプのプロジェクトが増えています。結局のところ、経営者の皆さんを悩ませるのは人や組織の問題なのです。ゆえに実際のプロジェクトでは、人事担当幹部のみならず、CXOクラスの経営陣との対話や議論が伴うのが常です。

ヘイグループでは他の人事系ファームに比べて戦略系のバックグランドを持っているスタッフが多く、高度に戦略的な案件から人事制度に落とし込む、逆に人の状況をもとに戦略を変えるといった、いわゆるチャンドラーの「組織は戦略に従う」とアンゾフの「戦略は組織に従う」の両面からのアプローチが可能です。人事を語る際に、経営戦略にまで踏み込んで提言できる点がヘイグループの大きな特徴になっています。

経営に直結するプロジェクト事例

先に上げていただいたアカデミックな知見をベースに経営全体に影響力の与えるような、ヘイグループの強み・ユニークさを生かしたプロジェクトの事例をいくつか挙げていただけますか?

まず私が以前手がけた国内消費財メーカーの事例を紹介します。この企業では10年ほど前までヒット商品を立て続けに飛ばしていたのですが、2000年代後半から勝てる新商品が生まれず経営的に苦しい局面が続いていました。社内的に色々な問題分析を重ねるなかで浮かび上がってきたのが、「人」の問題ではないかという点です。そこで弊社に相談が寄せられました。

弊社ではまず問題の分析に取り掛かりました。ヒット商品を連発していた時代の伝説のチームのメンバーを一堂に集め、当時のプロジェクトの進め方や会議の模様を再現してもらったのです。すでに引退されている方もいましたが、皆さん快く協力してくださいました。一方で現在の開発チームにも集まってもらい、両者を細かく比較分析しました。ヘイグループには、このような分析に用いるグローバル統一のアセスメントツールがふんだんに揃っており、観察を手がけるアセスサーと呼ばれる専門スタッフもいます。このスタッフが、個々のメンバーがどのような能力をどの段階で発揮しているのかを詳細に分析しました。

その結果、両者に決定的な違いがあることが判明しました。それは、先ほどの「打席数」の差です。先の伝説のチームは平均すると20代に10個以上の失敗作をつくっていました。1個の失敗作で5億円程度の損失となりますので、会社は1人に対して50億円という金額をかけて失敗する経験を踏ませていたのです。別の言い方をすれば、以前は会社が人材育成に莫大な投資を重ねていたのです。

一方、現役のチームはそもそも新商品の開発をほとんど手がけたことがありませんでした。平均すると経験した商品開発案件は1個あるかないかです。これがとても大きな経験値の差となって表れていたのです。

そこで弊社は、「ヒト・モノ・カネ」だけではなく、新商品をつくる場自体が「資産」となっている点をお伝えしました。そしてこの貴重な資産を有効活用するために、打席数を棚卸しして、ポテンシャルの高い人材に失敗も含めた経験を積ませることができる仕組みに変えることを提案しました。ポテンシャルの高い人材のアセスメントにも、ヘイグループの手法を適用しました。

なるほど。これはヘイグループの特徴である行動心理学にもとづいて開発した様々なツールや手法を活用して、経営課題の解決を支援した典型的な案件ですね。他にもありますか?

企業のCEOが手がける最大の意思決定と言われているのが、次期CEOの指名です。ここでもヘイグループの特徴が生かされています。次期CEOの指名に当たっては、独立した専門の委員会を設立して候補者を絞っていく方法が海外では一般的です。その際、弊社の動機診断ツールなどのアセスメント手法を活用して候補者の心理を分析し、対象者のくせや考え方などを可視化します。ここで導き出された心の傾向と、企業がこれから目指している方向とを照らし合わせて、候補者を評価します。日本企業でも、CEOの手腕が企業の命運を分けるという認識が広がっており、近年このような依頼を受けるようになっています。

ヘイグループで働く魅力:日本の組織の変革を通じて社会を変える

これまでは感覚的・主観的に判断していた分野にも、データ分析にもとづく緻密な評価が適用されているのですね。ではそのようなヘイグループで働く一番の魅力は何でしょうか?

欧米諸国と比べたときに、日本は製品やサービス、マーケティングといった分野では決して引けをとりませんが、遅れているのが人事や組織のあり方です。経営者を選んだり、リーダーを育成したりする点も含めて日本だけ依然として20世紀にとどまっているイメージです。裏を返せば、人事政策・制度のグローバル化が進むにあたり、今後の「のびしろ」がとても大きい分野といえます。このような成長・改善余地の大きい領域にヘイグループが重点的に取り組んでいる点は大きな魅力です。組織と人はどの企業においてもコアな課題で、私たちが手がける案件はどれもその企業になくてはならない大切なものであることを毎回実感しています。

より大きな視点でいうと、世の中の景観をつくっているのは企業であり、その企業を動かしているのは人です。ですので、人が変われば企業が変わり、企業が変われば世の中が変わります。世の中を変えようと思ったら、まず人を変えなければなりません。

国内の自殺者数は就労者を中心に年間3万人に上り、10年間で30万人にも達します。働くことが不幸につながっているのが現実と言えるのではないでしょうか? 働くことの幸せを取り戻すには、仕事のあり方、組織のあり方を変えていく必要があります。そうして仕事の幸福度を回復すれば、企業や社会、そして日本の健全な発展につながると考えています。

ヘイグループではこのような今の日本が抱えているハードコアな課題、換言すればソーシャル・アジェンダに取り組み、この世の中に大きな価値を生み出そうとしています。このことを日々の仕事の中で実感できる点がヘイグループで働く大きな魅力です。

日本のヘイグループが目指しているもの・社風

ヘイグループが今後、日本で目指しているものは何ですか?

先の答えの続きになりますが、人の成長・変革を手助けすることで、組織を変え、組織を変えることで社会や日本を変える - 特に日本の場合は中間管理職がカギとなりますが、彼らがリーダーシップを持って会社のリソースを使って主体的に物事を成し遂げていく、いわゆる企業内起業家と呼べるような行動を起こしていけば、仕事は楽しくなり、企業も発展し、世の中は元気になっていくと思います。

このような一連の変革をお客様と共に推進し、社会にも認知してもらえるようにしていきたいというのが、今の日本のヘイグループが目指す姿です。

少し変わりますが、働く環境や社風についても教えていただけますか?

まず「自由」ですね。私は過去に戦略系コンサルティングファームに在籍した経験もあるのですが、そこと比べても1人のコンサルタント、特に若い人材にも大きな権限と多くの責任が委ねられ、自分の自由裁量で動ける範囲が極めて大きいと感じています。

もう1つは、いい意味で「おっとりしている」ことですね。私を含めて「草食系」の男子が多く(笑)、ルールにあまり縛られずに、じっくりと腰を据えて自分のペースでプロジェクトに取り組めるカルチャーが浸透しています。そのため、コンサルティング会社では珍しく勤続年数の長い社員が多く、10~20年以上も在籍して自らの専門性を高めているスタッフもいます。

ヘイグループが求める人材

最後に求める人材像について教えてください。

高水準の論理的思考力など自立したコンサルタントに必要とされる能力に加えて、ヘイグループでは特に次の3つの資質を重視しています。1つめは、人や組織に対するSensitivityを備えていること、言い換えると空気や行間が読めることです。私たちの仕事ではクライアント企業の人や組織といった極めてデリケートな分野を取り扱います。そのため、健全な良識やモラルを持ち合わせていることがとりわけ重要になります。

2つめは、人に興味・関心があることです。先に述べたように、私たちの仕事ではクライアント企業の中に実際に入って調査・分析・改善案の実行をしたり、想像以上に経営陣を含めたクライアント企業の幹部と直接向き合ったりします。そこでは文化人類学者のように、積極的にフィールドワークに出て、対象を観察・分析するといった行動が求められます。

3つめが、異文化・多様性を受け入れられることです。近年では企業のグローバル展開を支援するプロジェクトも多く、その際はクライアント企業の海外支社やヘイグループの海外オフィスとやり取りする必要が出てきます。自分が海外に出て、自分とは異なる価値観や思考体系を持った人と英語でコミュニケーションする場面も数多く発生します。そのような異文化交流を抵抗なくできる人が向いています。

最後に、組織人事コンサルティングというものや、私たちヘイグループに対して、今までのイメージとは違う魅力を感じてくれたなら、まずは気軽に声をかけてほしいと思います。ヒトと組織の変革を通じて、企業を、社会を、そして日本を変える醍醐味を皆さんとともに分かち合えることを楽しみにしています。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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